虫を育てる娘

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今晩泊まらしてくれんかのう。
あがぁな家にはもう寝とられんけん。
ゆんべは隣へ泊まらしてもろうたんよ、
部屋の片隅でええけん言うて。
迷惑をかけちゃあいけんけん、トイレは使わんかった。
朝早うに家に戻って朝ごはんを食べたら、すぐにここに来たんよ。
今晩泊まらしてくれんかのう。

おとといのことよ。
あんまり寒いんで、パジャマのズボンを2枚穿いた上にもう一枚穿いて、寝たはずなんじゃ。
起きたら、ズボンが1枚頭元にたたんであった。
やっぱり夜中に誰かが忍び込んできて、
悪さをしていったんじゃ。
毎晩8時になったらやってくるんよ。
電気を消したらすぐに、懐中電灯の光が部屋の中をうろうろと探すのよ。
見つかっちゃいけん思うてその光をずっと見ていたんじゃけど、
眠り薬を飲まされとるけん、寝てしもうてのう。

あがぁな家にはおられん。
薬を飲まして眠らして男をとらせるんよ。
また、今晩も懐中電灯を持って探しにくる。

今朝のご飯もおかしかったんよ。
茶碗の底のほうがべちゃっとしとった、
こりゃご飯にまで薬を混ぜだしたんか思うたけん、
隠れて捨てちゃった。
家のご飯ははぁ食べられんいうことじゃ。

今晩泊まらしてくれんかのう。
炬燵も布団も全部持ってくるけん。

あがぁな家にはもうおられん。
大けな声じゃ言えんが、娘は虫を育てとる。
育てた虫をわしの着物や布団にばらまくんよ。
ほら、ここを見てみぃ、こんまい黒い虫がおるじゃろう。
こうやって両方の親指の爪で必死で潰すんよ。
プチップチッていう音がするじゃろう。
あこにもここにもいっぱいおる。

この家にはおらんか思うたら、どしたんかのういっぱいおるのう。
あんたの服にもおるで、ほら、そこ。
あんたも爪で潰さんにゃぁ。

今年の夏は暑かったろう。
虫がようけ育ってのう、両手いっぱいにするほどおったんよ。
娘に隠れて、3回ほど前の小川に流しにいったんよ。
水の中におる虫じゃったんじゃのう、
嬉しそうに流れていったわぃ。

あんだけ集めて流したのに、
今は寒い冬じゃいうのにのう、
なんぼでも出てくる。
やっぱり虫を育てようるんじゃ。

前は天井から降りてきようたんじゃけど、
娘が天井を新しゅうに張り替えてくれたんよ。
これで虫がおらんようになった思うたらのう、
育てようるんじゃけん、なんぼでも出てくるわぃのう。
うかつじゃった。

のう、お願いじゃけん、今晩泊まらしてくれんかのう。
あがぁな家にはもう寝とられん。



ありがとうのう、
泊まらしてもろうて。
晩ご飯までよばれて。

夜の薬はちゃんと飲んだよ。

そこの鍵かけてくれたんかいのう。

懐中電灯の光がウロウロしょうらんかいのう。
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by krsmag | 2011-02-15 19:07 | 暮らし | Trackback
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